成長する社会人になるために
第9回産業論文コンクール 努力賞
三笠産業(株) 田中 愛さん
成長する社会人になるために
社会に出るまでは、消費者の一人でしかなかった私が、入社して初めて感じた事はモノづくりの難しさだ。
近年における市場に並ぶ商品の製品ライフサイクルは短期である。私自身、学生時代にコンビニエンスストアでアルバイトをしていたが、ロングヒット商品以外の入れ替わりは非常に激しかったと記憶している。一般消費者を相手にした企業が上記の状態であるため、その企業を相手とした取引の企業も何かしらの影響を受けるのは明らかである。通常、市場における製品ライフサイクルは導入期、成長期、成熟期、衰退期の4段階に分けられ、最終的に市場での寿命を終える。モノが溢れている現在では、通常の製品ライフサイクルに乗る事すらできない。消費者のライフスタイルが変化した、他社で同種商品の低価格品が現れた、代替品が現れたなど負のスパイラル状態では収益を得られる期間は短くなり、新製品開発に要した費用を回収することもままならない。
では、企業が成長するにはどうすれば良いのだろうか。
私は人の成長が最も重要であり、その成長要因として「探究心」・「考動」・「発想」の3つが必要だと考える。
1つ目の「探究心」
何事にも知りたいという気持ちが人を成長させていく要因の1つだと私は考える。物事を進める際にその前段階として知識を得る必要がある。そこから下記で述べる「考動」に移し、結果の良し悪し関係なく何故良かったのか又は悪かったのかと次に繋がる点を見出さなくてはならない。その後、前回の反省・要因を踏まえて次のステップへと移る。最初に行う事は、自分の仕事に必要な社内知識・一般常識を積極的に身に着ける事である。ましてや新人である私は、まず自社の基礎のきの部分から知る必要がある。製品名や社内システム、自社技術など一から覚える事は山ほどある。自身が興味を持ち入社したのであるから、知っていこうという気持ちは大いにあり、楽しく覚えていける。そのあとから「探究心」が重要になってくる。開発であれば失敗した原因究明や行った実験のメカニズム、営業であれば社内だけでなくお客様の業界動向や今後の市場動向や経済について、事務は部門によって異なるが知っておいて損な内容は1つもないだろう。
2つ目の「考動」
これは辞書には載っていない造語だ。人間の行動の本質は「考える」と「実践する」の2つであると考える。考えるだけで何も行動をしない、何も考えずに行動するでは意味がない。考えて実践する、実践して失敗を学ぶことが重要である。「考える」と「実践する」の2つを合わせた造語が「考動」である。事務、開発、営業など職種問わず、必要な基礎能力である。最初は業務を覚える事で手一杯になるため、深く考える余裕はないだろう。しかし、ずっと言われた通りにただ処理を行っていくだけでは意味がない。自分の行っている業務はどのように繋がっているのか全体像を捕まえる事で、役割を理解してより業務の進行をしやすくなる。また、失敗したことを次に活かす事で、仕事の質、効率の向上に繋がっていくだろう。
3つ目の「発想」
冒頭で述べたように日本市場の製品ライフサイクルは短命だ。その上、海外からは安価な製品が入り、更に市場競争は激しくなっている。そんな厳しい状況を乗り越えるには世界基準になるような製品を創っていく必要がある。よって、製品やサービスの新たな市場開拓を行うために、個々が新たな価値を創造する「発想」を持つ事が大切だと私は考える。
世界を魅了した日本製品は現在どうだろうか。日本独特な固有のニーズに基づいて商品を開発する事で日本の消費者を囲い込む。非常に狭い市場で競争するため、高機能・高品質の製品が世の中に溢れる。同じ商品を世界市場に展開しようとした場合、自分たちが日本市場について思案している間にも世界では膨大な生産規模を武器に安価な製品を展開し世界標準を創っている。海外製品に比べ、日本製品は高機能だろう。しかし、幾ら高機能であっても日本標準製品が世界に受け入れられるとは限らず、既に基準が出来上がっている可能性も考えられる。その結果、世界標準を考慮した変更が行われ、たった1つの「高品質」を武器に既に世の中に展開された海外製品と戦うほかない。
「過去」は日本国内を中心に高品質・高機能のものづくりを行っていればよかったが、「今後」はそうは言っていられない。これからの顧客は先進国・新興国などの世界だ。近年でも技術レベルでは大きく差がない製品が数多くある。単に新技術を生み出すのではなく、新しい価値を生み出していくほかないのではないかと私は考える。そのためにも過去の成功や自分たちが築きあげたルールにとらわれず、「新しい発想」が必要なのである。これは一朝一夕で身に付けられるものではない。先に述べた知識と考動を習得してから取り組むことが出来る課題だろう。
この難しい時代を生き抜くには、固定観念にとらわれず現状を打破する新たな着眼点を見出す事が必須だ。一人ひとりが付加価値を創造し、考動していく。世界市場で日本が成長し生き残っていく術であり、世界をリードしたモノづくり大国日本を取り戻す手段であると考える。
今回述べた3点は私のまだまだ成長しなくてはならない項目だ。現在の部署に配属して半年ちょっと経ち、業務や自社知識を身に付けて、ようやくスタートラインから歩を進め始めたばかりである。ここから、3年、5年、10年と日々成長することで、世界で闘える新たなモノづくりに貢献していきたいと私は思う。