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Made In Companyのモノづくり

第8回産業論文コンクール 努力賞
住江織物(株)奈良事業所 知念 卓也さん

 私たちが普段目にしている製品には、「Made In Japan」、「Made In China」などといった原産国や生産国の表示がついている。この表示法は複雑であり、製品によっては原産国や生産国が異なったり複数の国が関与していると、例え原産国であっても表示されているのは生産国さらには加工国ということがある(特に食品に関しては製品ごとで非常に細かく規定されている)。ではMade In Company とはどういったものか。私の場合ならば、これは正しくはMade In SUMINOEというように、Companyの部分にそれぞれの会社名が入ることになる。

 これは就職活動の際に、ある会社の私が尊敬している方から聞いた言葉である。現在では、会社はある製品は日本製、またある製品は海外製などと、ものによって生産地が違うということがほとんである。しかし、Made in Japan、Made In Chinaというように生産地が異なる場合であっても、常に同じ品質のものを作らなければならない。つまりMade in Country(国名)というような考え方ではなく、Made in Company(自社名)として商品を提供していく、ということだ。

 ここで、現在までの日本産業の背景を述べたい。産業革命以降の日本は技術大国と呼ばれていたとおり、他国に勝るその技術力で多くの製品を産み出し、Made In Japanは高い評価を受け経済の発展に大いに貢献してきた。しかし、昨今の国内生産は、円の高騰、国内マーケットの飽和状態、安価な生産コストと急成長する市場を理由に相次いで生産拠点を中国等の海外に移している。このように、国内産業の空洞化、国際競争力の激化、欧州危機等による世界経済の低迷など日本産業の抱える問題は多い。そこで、この状況を好転させるための1つのキーワードとして、Made In Companyという考えを挙げたい。

Made In Companyとは「良いモノを安く作る」というどの企業でも考えている当たり前のことだと思われるかもしれないが、両者には違いがあると私は考える。

例えば消費者が製品を購入する場合、

①Made In Japan―  これは日本製だから少し値は張るが品質が高いようだ。

②Made In China―  これは中国製で日本製よりも品質に劣るが安価であり魅力だ。

といったように、品質と価格という主に2つの観点から選んでいるであろう(当然必ずしも上記のようなものであるとは限らないが)。では企業はどうか。当然製造会社は品質が高いモノを低コストで作ろうとする。上述したように、それはまさに現在の日本がおこなっており、今後も広がっていくであろう海外生産である。

では次のような消費者はどうか。

③Made In Company―この製品は価格が少し高いけど、この会社のものだから買おう。

これが私の考えるMade In Companyである。これは3つの意味を持つ。1つめは品質力、2つめはブランド力、3つめが会社の意識力である。

 品質力に関しては冒頭でも述べた、生産地に関わらず安定した品質のモノを作る、ということだ。海外生産が今後増えていくことは容易に想像できるが、海外での事業での展開は日本はむしろ後発的であるといえる。人件費が安いということから多くの企業が中国での生産をおこなっていたが、現在では人件費の高騰から中国での生産を縮小する動きがあるように、刻一刻と移り変わる世界経済のなかで、コストに縛られるのではなく品質に焦点を当てることも当然重要であるといえる。

 ブランド力とは、モノの価値ではなくむしろ会社としての価値である。相手先が消費者、企業に関わらず、この会社のモノが良いという概念を広めていくことは重要であると同時に非常に難しい。それには品質、価格、信頼性など多くの要因が関わってくるためだ。さらには会社の価値を差別化するために、オンリー・ワンの製品や技術が必要である。

 最後の会社の意識力、これはMade In Companyを目指す上でもっとも必要であると考える。ただ「良いモノを安く作る」という考えと、「Made In Companyのモノを作る」という考えでは、モノづくりに対する情熱、考え方が大きく異なるのではないか。少なくとも開発者である私たちは、Made In Companyのモノを作る、という考えをもつことが大切であると思う。そのように考えれば当然自分の会社が作っているという意識は高くなり、おのずと品質やブランド力などに対して厳しく追求していくのではないだろうか。このことで、安易に品質の良いモノを低コストで作るための海外生産から、Made In Companyを目指す上での海外生産に変わってくる。そこでようやく、その海外生産に必要なための人材育成や事業展開につながることが本質なのではないだろうか。

 私はまだ入社して日は浅く、目下自社の技術を勉強することに励んでいる。日々目にするものや体験することは新鮮であるが、開発者としてはあまりにも未熟でありまだまだ精進していかなければならない。と同時に、これまで先輩方が築きあげた自社の技術に驚いており、わたしもそれをさらに積み重ね、少しでも貢献していきたいと思っている。そして、得た知識、経験、技術をもとにMade In SUMINOEのモノづくりを目指していきたい。

 

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