モノづくり企業と私の役割
第7回産業論文コンクール 努力賞
(株)ヒラノテクシード 三浦 秀仁さん
私は転職組みで、縁あって今年の初めに当社に入社させてもらうこととなった。前職とは全く畑違いの「モノづくり」企業、そして営業課に配属となり、知識や仕事のノウハウ等、まるで分からないド素人で、正直なところ、まだまだ失敗したり迷惑を掛けてばかりである。「モノづくり」企業であるにも関わらず、知識や技術のない私が今、この「モノづくり」企業の一員として、自分にできることは何か、これからどのように取り組んでゆくべきかについて考えてみたい。
私がこの企業の中で、まず与えられた役割、それが「営業職」である。そもそも「営業」とは何か。まずは営業の果たすべき役割や目指すべき理想像について考えてみる。企業の営利活動とは、1商品を開発する(モノづくり)2顧客に商品を販売する(営業)3顧客に商品を納品することで顧客のニーズを満たし、対価を得る(収益)という大きく三段階に分けられると思う。このうち、営業が担う役割は、商品と顧客をつなぎ、商品を収益に換える重要な役割と言える。営業機能がないと、企業経営は成り立たず、企業の命運を握っていると言っても過言ではない。ビジネスの最前線で奮闘するタフな職種であるが、その反面、企業の顔として、顧客と向き合い、企業の可能性を広げてゆくというやりがいのある仕事である。
営業マンの心得として、忘れてはいけないことは、「顧客は営業マンと商品をセットで見ている」ということである。営業マンの評価が上がれば商品の評価も上がり、商品の購入につながる。これは、顧客の立場から考えると当たり前のことで、顧客の欲求は、「自分を丁重に扱って欲しい」ことはもちろんであるが、取引の金額が高額であればあるほど、「この営業マンは自分に価値を提供してくれる」という信頼感も不可欠である。この信頼感を得るためには、営業マンの人間性が大きく影響しているだろう。
例えば、自分が車の購入を考えているとする。どの車を購入するかは、自分が求める性能を備えていることが絶対条件であるが、同じ条件を満たし、価格もほとんど同じである場合、最後に決め手となるのは販売員への信頼感であろう。この信頼感とは、その人の知識や態度、人間性等が総合的に与える印象であるとも言える。
私は営業課に配属になってから、立派な営業マンになるために一番大切にしていることがある。それは「人と人とのつながり」を築くことである。自分を成長させるためにも多くの人と出会い、つながりを築く。上司、先輩、顧客、家族、友人、異性どんな形でもいいし、関係が多ければ多いほうが当然良い。年上・年下、男性・女性等それぞれの経験や価値観によって考え方は大きく違い、顧客・上司等その人が置かれている地位や立場によっても考え方は大きく変わってくる。より多くの人とたくさんの話をして自分以外の色々な考え方を知ることで自分の考えだけでは考え付かないような意見がたくさん生まれ、自分の意見も多少なりそのたくさんの意見たちの影響を受け進化していく。その「人と人とのつながり」によって自分の考え方や物の見方、価値観が変化していくのが今は凄く面白い。
営業職になるまでは自分の苦手なタイプなど、付き合うことが億劫な相手とは相手にせず、正直あまりコミュニケーションを取ってこなかった。しかし、今は色々な立場や考え方の人と上手くコミュニケーションを取れるようになるためにと、そのような相手とも積極的にコミュニケーションを図るように心がけている。そうすると、第一印象とコミュニケーションを取った後では想像していた人物像と全く違う場合が多く、中には尊敬できる人、目標にしたいと思える人さえもいる。相手のことを第一印象や固定観念で決めてしまいがちであったが、そうしたものを取り払って考え方を少し変え実行したことで、自分がどれだけ食わず嫌いをしていたかがよくわかり、凄く損をしていたことに気付くことができた。色々な立場の人から意見を吸収していると、「こんな考え方があったのか」と驚くこともあるし、逆に「それは違うだろう」と自分の意見がはっきりすることもある。
自分の意見を無くすのではなく、相手の意見を取り入れ、自分の考えとミックスさせて自分の中に新しい考え方を作っていく。それを繰り返すことで視野がどんどんと広がっていき、自分の成長に繋がると思う。
今、「モノづくり」企業の一員として、自分にできることは何か。それは、営業マンとして顧客の信頼を得て、企業が作った「モノ」と顧客をつなぐことである。そのために人と人とのつながりを大切にし、自分を成長させてゆくことだと思う。
新米営業マンで、知識もまだ乏しく、顧客から質問を受けても上司や諸先輩方の手助けがなければ満足な回答ができない私ではあるが、自分にできる最大限の誠実な態度で顧客に臨みたいと思う。また、知識をつけ、経験を積み、自分を成長させてゆくことで、顧客からより一層の信頼を得られるように努力したいと思う。
そうすることが、この企業における営業職としての自分の役割であり、自分ができる「モノづくり」への貢献の形である。