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提案型企業に勤めて

第5回産業論文コンクール 最優秀賞
(株)ヒラノテクシード 松井 聡司さん

「ヒラノテクシードは提案型企業です。」これは入社式で社長から聞かされた言葉です。入社式のことは正直に言って緊張と不安であまり覚えていませんが、この言葉は今でも深く印象に残っています。私はこのとき初めて「提案型企業」という言葉を聞きました。そして、会社を良くするために社員全員が提案を出し合っていくという考えがとてもすばらしいと感じました。なぜなら、ものづくりにおいて提案を出すことは一番重要なことだと考えているからです。

近年、工業技術が発達しこれまで人間がしていた作業をコンピュータやロボットに置き換えるということが多くなってきています。ヒラノテクシードに入社して半年近くになりますが、実際にコンピュータやロボットを使い仕事の効率化を図るような例も何件か見ました。計算能力や単純な動作のスピード、正確性なら人間は到底敵わないでしょう。しかし、技術が進歩した現在でも人間が負けていない能力の分野があります。それはアイディアを出すことです。工業技術は日々目覚ましい進化を遂げていますが、コンピュータがアイディアを出せるようになるのはずっと遠い未来の話だと思います。そういった理由から、現在のものづくりにおいて人間のやるべき大事なことはアイディア=提案をだすことだと私は考えているのです。
しかし、提案を出すことはとても難しいことだと思います。そう思う理由は、人間がどうしても固定概念に捉われてしまうからです。
固定概念の例えとして、私の知っているクイズを出します。「マッチ棒を6本使って一辺の長さがマッチ棒の長さと等しい正三角形を4つ作りなさい。」というクイズがあるのですが、この問題を紙の上でいくら考えても答えは出ませせん。この問題の正解はマッチ棒で正四面体を作るというものです。このような問題を目にしたとき私たちは平面で考えるのが当たり前という考えに捉われてしまい、立体的に考えることができなくなります。そして一度その考えに捉われると、考え方を変えることが困難になってしまいます。クイズを例にとりましたが、仕事をする上でも固定概念が障害となり、解決できない問題はたくさんあると思います。

多少不便なことがあっても、それが毎日のように続くと、不便であることが当たり前のことだと決めつけてしまいます。すると、解決策を提案するのをやめてしまい、ずっと不便な状態になってしまいます。固定概念のさらに厄介なところは、自分自身が固定概念に捉われていると気付きにくいところだと思います。固定概念に捉われていては問題点を提案することと問題の解決法を提案することができなくなると私は考えています。
それでも私は、入社以来固定概念にとらわれて問題点を見逃してしまったと反省することが多々あります。そんなとき、会社の先輩から固定概念に捉われず、問題点を発見するにはどうすればいいかを教えていただきました。その方法は常日頃から物事に疑問を持つことです。「当たり前として物事を見るのではなく、なぜそうなっているのか?なぜそうでなければならないのか?といったことを考えなさい。そうすれば物事の問題点が見えるようになってくる。」とのことでした。私は「なるほど!」と思い、さっそく実践してみると、たくさん疑問を感じる分野と、あまりそうでない分野があることに気付きました。どうやら、興味をもっている分野のほうが疑問を感じやすいようです。疑問を持つためにはまず、その事柄について興味を持つことが重要といえると思います。興味を持てば疑問に感じることがでてきて、問題点が見えてくるということがわかりました。
問題点をはっきり見つけることができれば、解決法を提案することができると思います。それでも、なかなか解決法が見当たらない場合は、また固定概念に捉われていないかを考えることが大切だと思います。普段とは違う切り口でものごとを考えられるように練習をしていきたいと思っています。
また、一人で考えていてもいい解決法を提案できないときは周りの人の意見を参考にすることで、ものごとを違った方向から見た提案ができると思います。他人とコミュニケーションを取ることもコンピュータやロボットには真似できない人間のすばらしい能力のひとつだと考えています。
これからの時代コンピュータやロボットの能力がどんどん上がり、提案することが人間の仕事の大部分になっていくと思います。社内全体が提案を出し合って会社を良くする提案型企業のスタイルを忘れず、提案し続けることが重要であると私は考えています。

最後に、まだまだ新しいことが多く固定概念にとらわれにくい新入社員の我々がもっと積極的に提案をしていくことで会社がよりよくなっていくのではないだろうかと提案します。

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