心を込めた接客
第5回産業論文コンクール 努力賞
小山(株) 木口 詩織さん
私は今現在、介護用品の卸レンタル業者の事務職に就いている。
介護用品を扱う、即ち福祉に関わる仕事というのは、今の日本の抱えている不景気という問題とは無縁に思われるかもしれない。しかし、いくら高齢化社会と言われているとはいえ需要が増えれば供給する側が増えるのも当然のことで、この福祉業界でも競争が激化しているのが現状だ。実際その競争に勝ち抜いていくには様々な戦略が必要になるが、私が思う最終的に一番の決め手になるのは「心に訴えるサービスができる」かどうかだと思う。では、その「心に訴えるサービス」としてお客様に選んでもらうには具体的にどの様なことがポイントになるのだろうか。
色々と調べてみた所、いくつかのポイントがあることがわかったが、特に印象に残ったのが「事前期待が実績評価を上回っているか」ということが挙げられていた点だ。
事前期待とは、事前に抱いている期待感。実績評価とは、事後に下される実際の評価。要するにお客様の期待以上のパフォーマンスを目指そうというわけです。
期待はずれなのは問題外としても、期待通りの「まあまあ」の評価では、「もう一回頼んでみようかな」という評価にはなかなかならないでしょう。
そこに驚きや感動が無ければ、すぐに忘れられてしまうのです。あなたのお気に入りの飲食店やショップを思い浮かべてみて下さい。 引用「沈黙のクレーマー」
確かに自分が客の立場になり考えてみると、この考え方はとても理解できた。
以前、贈り物としてデパートに洋菓子を買いに行ったが、店舗の数や商品の種類の多さに決めかねていた時に「良かったらお一ついかがですか?」とさりげなく声をかけてくれた店員がいた。商売の為だろうが、その笑顔に私は迷わずそこの商品を購入した。
この出来事はとても些細な事ではあるが、お会計が済んだ後私はまた何かあればそこに行きたいと考えていた。温かい笑顔と思いやりの気持ちで期待以上の驚きを与える。
これがはやり当たり前かもしれないが大切な事なのだと身を持って体験することが出来た。
また、別のケースではあるが、まったく初対面の店員にもかかわらず、その接客の為にその店で商品を購入したこともあった。私は基本的には店先で話しかけられるのはあまり好きなほうではないのだが、その店員はその商品に関する話をとても熱心に話し、私の事、そして自分の事をふまえてまるで友達の様に接して来てくれた。おかげで、私はとてもその時間が楽しかった。
真剣な買い物だったので他の店も見てくるとその時は店を出たのだが、他の店をろくに見ない内に、やはりあの人のもとで買いたいと思っている自分に気付いた。残念なとこに店に戻った時にはすでにその店員は退社していて会うことは出来なかったのだが、私は迷わずそこの店で買い物をした。
この二つの体験は私の中の接客の在り方について考えさせてくれるきっかけとなり,「心に訴えるサービス」とは「心の繋がり」で生まれるのではないかと考えた。
つまり仕事としての付き合いではなく、どこまで一個人として一対一で付き合えるような関係を築いていくことが出来るかが、他社との競争を勝ち抜いていけるかどうかの重要なポイントになるのだ。私の今の仕事は事務なのでお客様と直接お会いする機会は殆どない。主な接客は電話対応になるので、個人で関係を築くことは難しいが、それでも電話を通じて感じることが沢山ある。「遅くまで大変だね。」「いつもありがとうございます。」など、ほんの些細な一言が凄く嬉しい。
よく、自分がされて嫌なことはするな、自分がされて嬉しいことを人にしなさいと耳にする。私も人にされて嬉しいと思った事は今までに沢山あるが、その人々の優しさに触れた分、今度は私がその一言と期待以上の行動を添えて人と接していきたい。それが自然と仕事に繋がり、売上にも繋がっていくのではないだろうか。
心の繋がりを大切に、これからも精一杯の誠意を込めて接客をしていきたい。