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営業の役目

第4回産業論文コンクール 努力賞
秋津鋼材(株) 高橋 俊輔さん

ジュエリーと時計の店頭販売員だった私は、昨年(2007年4月)に秋津鋼材株式会社の営業部へ転職しました。
当社はコイルセンターと呼ばれる業種に属し、各鉄鋼メーカーから鉄やステンレスを仕入れ自動車・電機・建材等、各産業業界が必要とするサイズに切断加工をし、それを商品として販売する加工流通業。
ジュエリーと時計を販売するサービス業から鉄やステンレスを販売する営業マンとして、全く未経験な産業の川中へ身を投じました。「業界知識」が白紙の状態での再スタートでしたが、前職で身に付けた「販売員の役目」を現職の営業活動でも意識して「営業の役目」に生かし、私自身の営業スタイルを構築させようと思う。
「商品+自分」これを意識する事が営業マンに必要であると考える。
先日、我が家のテフロン加工されたフライパンが焦げ付く様になり、妻と息子二人を連れ近所の大型スーパーへ新しいフライパンを買いに行った。そこには、「鉄のフライパン」と「テフロン加工のフライパン」、テフロン加工より寿命が長い「マーブルコートのフライパン」が有り、妻はその3種類のフライパンを目の前に数分間悩んだ結果、マーブルコートのフライパンを抱えレジに並んだ。
付加価値の高い商品が選択される事は当たり前の事である。
「商品+自分」の考え方とは、「自分の存在を商品の付加価値にする。」という事。自分の営業センスやパフォーマンス、対応の仕方などでその商品の付加価値を高める事が出来る。
例えば、あの時フライパン売り場に「鉄のフライパン」の販売員がいれば・・・。
<接客トーク>
「鉄のフライパンは、持ち帰って頂いたらすぐに空焚きと油慣らしをして、調理後はフライパンが熱いうちにお湯で洗ってください。少し面倒ですが、手入れさえすれば焦げ付かず10年・20年と長持ちし、使えば使うほど油が馴染んで使い勝手の良いフライパンに育ちますよ。そのうち手入れせずにはいられないほど愛着が湧き、プロの料理人になった気分で毎日の料理が楽しくなること間違いなし!しかも鉄のフライパンで調理する事で微量ですが鉄分の摂取にもなり、偏食しがちな今の時代だからこそ、お子様たちの為にも是非私のお勧めする鉄のフライパンをお買い求め下さい。」と熱くアプローチされていれば、我が家にやってきたのは鉄のフライパンだったかもしれない。
販売員のこの接客トークは、自分の持っている知識をただ並べているだけではなく、一つ一つの言葉に意味が有り、買い手の意識を売りたい商品へと導いているのである。
(1)鉄のフライパンは焦げ付くという固定概念の緩和と的確なアドバイス。
(2)手入れが必要という、予想される不安要素の開示。
(3)「育てる」という単語にて「only one」の付加価値すり込み。
(4)料理に対するプライドの刺激。
(5)「子連れ」というお客様から得た情報を生かし、親心の刺激。
(6)商品に自信があるという強い訴え。
この様に、商品の付加価値を高めるポイントを押さえ自分でそれをアレンジし、お客様の興味を自分自身へ引き付ける。そうすれば販売員の「お客様心理の誘導」により、お客様にとって商品の付加価値が高まり「商品+販売員」で売りたい商品が売れる。
当社同業のコイルセンターは全国に110社以上存在する。ユーザーはその中から仕入先を選択し、発注する。このユーザーの選択はのどが渇いたときの自動販売機でのジュース選びと似ている。自動販売機はお金を入れると、どのボタンを押しても「のどの渇きを潤す」という需要を満たす商品を得る事が出来る。これは気分や興味によって押すボタンが変わる可能性が有るという事を意味する。
自動販売機に意思は無くそこでの売買の主導権は100%ユーザーが握っている。
営業マンが自動販売機であってはいけないのだ。
私は前職での接客の中でお客様を「褒める」事を徹底して行っていた。
褒める内容は、髪型や服装、持ち物、お化粧、マニキュアの色などなど自分の目から得た情報を言葉で表現する。
「褒めてくれる人=自分を理解してくれる人」この心理が働く為、お客様から本音の会話を引き出す事が可能になり、お客様も褒めてくれる人に興味を持つ。そうすれば、お客様の需要の的確な情報を得やすくなり主導権を売り手が握る事が出来る。
しっかりとユーザーの状況を自分の目で見て確認し、本音でのコミュニケーションにより情報を集め、それらを生かし興味を自分に引き寄せ主導権を握る。それが「営業マンの役目」であり当社の利益に繋がると考える。
最後に「付加価値の高い物」が選ばれ、それが当たり前になっている時代により、ユーザーの要望(品質や納期対応等)も厳しくなってきている。それも当たり前の事として当社はクリアしていかなければならない。この「当たり前」とされる苦労は、当社製造部と秋津物流株式会社(当社専属運送会社)の方々が背負い、能力の100%を駆使してこれに対応して下さっている。その努力に感謝し私は営業活動で当社利益を積み上げる100%の努力をする。

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