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仕事に必要なコミュニケーション能力

第3回産業論文コンクール 努力賞
小山(株) 山内 幸一さん

1.はじめに
私が就職活動をしていた1年前、企業が学生に要求する能力としてよく耳にしたのが「コミュニケーション能力」だった。当時私はコミュニケーション能力と聞くと「話を聞く」「会話ができる」といったことしか思い浮かばず、こういった能力なら今でも十分身についていると安心していた。しかし実際に就職し働き出すにつれ、自分の考えていたコミュニケーション能力と、仕事に必要なコミュニケーション能力との間にギャップがあることに気づいた。本稿では私がこれまでに職場で必要と感じた、仕事に必要なコミュニケーション能力についてまとめていきたい。

2.仕事に必要なコミュニケーション能力
ここでは仕事における「コミュニケーション能力」を仕事における会話能力と定義する。私は仕事に必要な会話能力として、以下の5つの要素があると考えている。
(1)仕事に関する専門知識の蓄積
(2)相手の話の聞き取り、相手の話を引き出す
(3)会話内容の理解
(4)相手へ意見を伝える
(5)自分の意見を相手に納得させる
これから、具体的に5つの項目について説明していく。

(1)仕事に関する専門知識の蓄積
まず会話前の準備として、仕事上の議論をするための知識は必要だ。知識がないまま相手と話をしようとすると、相手の話に合わせるだけになってしまう。内容のある議論をするためには、事前に必要な知識をある程度蓄えておかなければならない。
(2)相手の話を聞き取り、相手の話を引き出す
相手の話を聞く際は、ただ相手の話にうなずくだけではいけない。会話の中で、相手が話しやすい環境を作り出すことが大事だ。自分が相手の話に興味があるという姿勢をみせる。また、会話中に相手の話を引き出す質問を投げかける。そうすることで、相手はより多くの情報を提供してくれる。
(3)会話内容の理解
相手の話を聞いている最中は、落ち着いて相手の話を聞き、会話内容の把握に努める。相手の論点を整理し、相手が何を言おうとしているのか。どういった意見を自分に求めているのかを常に探りながら話を聞く。また、話を聞いている最中に話の論点が分からなくなることがある。相手の会話の展開が早すぎ論点が整理できない場合には、その都度相手に確認する。相手が伝えたいことと自分の受け取った情報との間にズレがないようにしたい。
(4)相手へ意見を伝える
相手へ意見を伝える際には、まず相手が自分の伝える内容についてどれだけの知識を持っているかを確認する。実際に自分の意見を伝える際には、頭に入りやすいように、結論から先に伝え、その後理由を説明していく順序で話を展開する。そして会話中に相手の表情やしぐさを確認し、一方通行の会話にならないよう注意する。
また、話している最中には自分の伝えたい内容の論理的な流れを常に頭に置くことが肝心だ。流れを考えて話さないと話の筋があちらこちらへ飛び、分かりにくい話になってしまう可能性がある。
(5)自分の意見を相手に納得させる
自分の意見と相手の意見が対立し、相手の意見を自分に合わせてもらわなければならない場合がある。その場合は、まず意見の対立している点を整理する。相手が何に対して反対しているのかをはっきりさせ、相手の反対を解消させるような根拠を示す。ここで注意したいのは意見の押し付けだ。自分の意見を通そうとするあまり、意見を相手に強引に押し付けてしまうと、相手には不満が残る。相手にやる気を出してもらい、より良い仕事を行ってもらうためにも、相手に納得させるまで粘り強い意見の交換が必要だ。

以上が私の考えた仕事に必要な会話能力の5つの要素だ。私はこの5要素の中でも最後の「相手に納得させる」力が仕事で最も必要だと考える。なぜなら、会社での仕事は一人で行うわけではないからだ。特に何か新しいことを始めようとする場合や会社を変革させる場合、周りの上司・同僚の協力なしでは実行できない。周囲に自分の考えを理解してもらい、お互いに納得して仕事をすることでより良い結果に結びつく。

環境の変化するスピードが早い現代社会においては、会社も変わっていくことがますます重要だ。企業間の競争に打ち勝っていくには、これまでの会社の慣習や方式を見直し、無駄を省き、会社がより良くなる様改革をしていかなければ周囲から取り残されてしまう。我々には、周囲をやる気にさせ、巻き込んでいく会話能力が必要ではないだろうか。

3.終わりに
社会人2年目となった現在、私には仕事に関するコミュニケーション能力が身についているとはいえない。会話する相手に対し、自分の意見を通すことがなかなかできないでいる。ただ幸いなことに、仕事をしていると見習いたいコミュニケーション能力を持った方々に数多く出会う機会がある。その方々の良い部分を吸収し、さらに自分のコミュニケーション能力を高めていきたい。そして、10年後、今度は自分が周囲の見本となるのがこれからの目標だ。

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