事務系社員として現場のためにできること
第20回産業論文コンクール 最優秀賞
株式会社きんでん奈良支店 北村耀平 氏
事務系社員として現場のためにできること
1.きんでんに入社を決めた理由
2.1年間の研修で学んだこと
3.私に求められる役割
4.おわりに
1.きんでんに入社を決めた理由
私の出身は青森県の八戸市という、太平洋に面した工業や漁業の盛んな地域である。2011年3月11日、当時小学5年生だった私は、大きな災害を経験した。東日本大震災である。私が住んでいた地域は、海辺から離れており、津波の被害を受けなかったが、地震の影響で停電となり、しばらくの間、電気の使えない生活を余儀なくされた。電気の使えない生活に不便を感じたのはもちろんだが、明かりの灯らない夜の街に恐怖したことは、今でも鮮明に記憶している。「当たり前」が「当たり前」であり続けることの偉大さを経験した出来事であった。
このような経験もあって、就職活動の際には、社会のインフラを支える会社に勤めたいと思っていた。そんな折に大学の先輩から弊社を紹介してもらった。なんとか内定をいただき、2023年4月からきんでんの社員としての新たな生活がスタートした。社会人最初の1年は研修を通して様々なことを学び、2年目の今春、奈良支店工事部工事課に配属された。
2.1年間の研修を通して学んだこと
新入社員としての1年目の研修は、実務におけるスキルを身に着けるための研修というよりも、会社の事業内容を理解するための研修であった。きんでんの事業内容は大きく2つに分けることができる。1つ目は、電気を人々に届けるための送配電線の整備を主とする送配電工事、2つ目は建物の電気設備の構築を主とする一般工事である。
研修では送配電工事、一般工事それぞれの工事現場で作業を経験させてもった。現場では、「社会のインフラを支える」、「良いものを作る」といった意志のもと、全員がそれぞれに与えられた自分の仕事に責任感とプロ意識を持ち仕事に取り組んでいた。社会のインフラを支える最前線である現場で活躍する作業員や先輩社員の表情は真剣そのものであり、現場は活気にあふれながらも、少しのミスも許されないという張り詰めた空気が漂っていた。そんな現場での実習を通して、諸先輩方への憧れを抱くとともに、事務系の社員である私自身が現場の方々から一人前として認めてもらうためには、相当の責任感や緊張感をもって仕事に当たらなければならないと自覚した。
1年間の研修を通して、きんでんという会社のことを少しずつ理解し始めた私だが、現場における、プロフェッショナルが集う弊社において、間接部門に属する私が存在する意義とはいったい何だろうか。本論文では事務系社員の私にできること、求められていることを考えていきたいと思う。
3.私に求められる役割
きんでん奈良支店は、直接部門である、一般工事を行う工事部、送配電工事を行う電力部と、間接部門である、総務や経理などから成る業務部とで構成されている。そんな会社における私の立ち位置は、工事部の事務担当者という、直接部門に所属しながら間接業務を行う役割である。事務系の社員でありながら、現場に近い立ち位置で仕事をすることができる、とてもやりがいのあるポジションである。
工事部事務担当者の主な仕事は、工事の受注から完成に至るまでのあらゆる書類の管理である。しかし、それ以外にも現場からの様々な要望や相談に応えることや、社内各部門との調整役など、名前のつかない仕事も多々ある。そんな名前のつかない仕事は、マニュアルがなく、私自身の力が試される難しい仕事となることもしばしばである。
私の主な仕事は、工事を受注してから完成に至るまでに必要となる書類の管理だが、これらの仕事は法律や社内規則、コンプライアンスなどに則って進めるものであり、ある程度マニュアル化できる仕事でもある。もちろん、この仕事をしっかりとこなせることが私の仕事における絶対条件であり、重要な仕事であることも認識している。しかし、マニュアルに沿った仕事をこなすだけの人間を周囲は求めているのだろうか。先ほども述べたように、私の業務にはマニュアルのない、名前のつかない仕事も多い。その仕事は直接利益に結び付くことはないかもしれないが、そういった仕事と向き合い、誰かの役に立つことで、私は周囲から必要とされる存在となり、私がこの会社に存在する意義となりうるのではないか。つまり、きんでんという会社において、私に求められ、かつ私が目指すべき役割は、そんな名前のつかない仕事のプロであることではないだろうか。
本論文で何度もプロという言葉を用いてきた。では、私の役割におけるプロであるための条件とはいったいなんだろうか。研修を通して出会った先輩社員や、身近な上司を参考に、私なりに定義してみようと思う。
私が考える、プロであるための条件は大きく分けて3つである。1つ目は、自分の仕事に妥協しない姿勢をもつこと。2つ目は、一緒に仕事をしたいと思ってもらえる人柄であること。3つ目は、仕事を任せたい、相談したいと思ってもらえる実力があること。以上の3つが、私が考えるプロであるための条件である。
まず、1つ目の、仕事に妥協しない姿勢について述べようと思う。私が考える、仕事に妥協しないということの意味は、求められているレベルの成果物を提供するための努力を惜しまないということである。研修で出会った先輩社員は、皆、仕事の力の入れどころを理解していた。常に100%の力で仕事に当たるというのではなく、相手に満足してもらえる、喜んでもらえるものを提供するということを第一に考え、必要な時には120%の力で仕事に当たる意識が重要である。
次に、2つ目の、一緒に仕事をしたいと思ってもらえる人柄について述べようと思う。研修でお世話になった先輩社員は、人と接するときはいつも笑顔で、私よりはるかに年上であっても、どこか親しみやすい雰囲気の人が多かった。仕事のプロになるためには、まずは、同僚や先輩から仕事を受け、期待に応えることで、仕事のパートナーとして認めてもらうという過程を経る必要がある。したがって、話しかけやすい、お願いしやすいといった印象を相手に与え仕事を受けやすい態勢でいることは必要不可欠である。何気ない会話でもしっかりと相手の話を聞く意識を持つことや、笑顔で相手に接する心掛けが大切であり、これを日々継続していく必要がある。
最後に、3つ目の、仕事を任せたい、相談したいと思ってもらえる実力について述べようと思う。私は、実習で資料作成を頼まれた際に、分からないことが多く、自分なりに考えて作成したものを提出し、注意を受けたことがあった。その際に、先輩からは、困りごとがある時は、誰かに相談し、少しずつでも仕事を進めていくことが大切であると教わった。そういった経験から、仕事をする上では周囲との協力が不可欠であると実感し、仕事における実力とは、周囲と協力して、問題を解決していく力だと理解した。したがって、実力を培っていくためには、先輩や同僚から学びを得つつ、協力して仕事を進める意識を持つことが重要である。
4.おわりに
以上のことから、仕事のプロとは信頼しあえる人間関係を築き、着実に仕事を前へと進め、周囲からの期待に応えられる人だと言える。知識や経験を豊富に蓄えているわけではない今の私は、なおさら周囲に協力を仰ぎつつ、目の前の課題と向き合わなければならない。時には自分の無力さを実感し、途方に暮れることもあるかもしれないが、あきらめずに一歩ずつ前進し、間接部門のプロとして、現場から頼られる存在になりたい。