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日本人の美意識とモノづくりについて

第2回産業論文コンクール 努力賞
第一化工(株) 馬口 幹生さん

わたしは大学を卒業後電子部品(液晶パネル)の製造会社に就職し、主に品質管理部門で5年半ほど勤めていました。その後、会社が自主閉鎖することが決まり、以前の会社の紹介で現在の第一化工(株)に就職し、プラスチックキャップの製造現場に配属となり1年と3ヶ月余りたちます。
以前の会社と合わせ約7年、モノづくりに携わり、日本のモノづくりにとって大切なもの、これから日本の製造業が世界で生き残っていくために必要な物の一つに「美意識」というものがあるのではないかと思い、以下、「美意識とは何か?」 「日本人の持つ美意識」「美意識こそ日本のモノづくりに必要なものである」に分け説明していきたいと思います。
1、「美意識とはなにか?」
辞書で美意識を調べると「美に関する意識、美しさを受容したり創造したりするときの心の動き」とあります。つまり綺麗な物を見て美しいと感じる事や、自分や他人が作った物や行動に感動することです。
2、「現場で考える美意識」
これを生産現場で考えてみると「整理、整頓、清掃、清潔、躾」と5Sといわれているものがあります。しかし、それをただ言葉通り受け止め機械的にやるのではなく、そこに従業員一人一人のこだわりや気持ちを入れていくこと、そしてそれを各部門間で切磋琢磨し、競争意識を持ちながら行い最終的にそれが美しいと感じ、感動するぐらいのレベルまで持っていくことが大事ではないかと思います。または日々の仕事で、出来上がってくる製品一つ一つに対して、それが美しいと感じるかどうか、自分が満足できるかどうかそれが大事なのではないか。もちろん製品それぞれに基準がありその範囲内であればどれも同じ合格品である。しかし、合格品の中でも赤点ギリギリから100点満点まであるわけであり、つねに100点に近づけようと意識することが大切なのではないか。つまり、「昨日も今日も基準内OK!」よりも「昨日の製品より今日のほうが出来映えが悪い、なぜだろう?」など些細な事も感じとって考える事、そしてよりよい製品を作ろうとする意識が大切なのではないかと思います。もちろん芸術作品をつくっているわけではなく、コストの問題も考えていかなければなりません。しかしこだわりを持つことにより現場作業者の能力や意識の向上、ひいては会社全体のレベルUPにつながっていくのです。
美意識を現場で生かすということは何もお金をかけて新しくする、備品を新品に交換するということだけではなく、現場で働く人の意識が一番大切ではないかと思います。新しくて綺麗な工場は当たり前ですが、古くて綺麗な工場はすばらしいと思います。なぜなら、そこには働いている人の意識の高さが見えるからです。私はどんな現場でも、そこには働く人の性格や仕事に対する意欲が必ず表れてくると思います。そしてそれは新しい工場より、古い工場の方がよくわかるし表に出るものだと思います。
3、「日本人の持つ美意識」
日本は美しい自然環境を持った国であり、その国で育った私たち日本人には美しい物に対する感性が豊かであると思います。だからこそ日本は古くから世界に誇れる物を生み出してきたのです。例えば文学では、源氏物語や枕草子、伝統文化の能楽や茶道、華道、建築では法隆寺や姫路城などです。そしてこれらは日本のモノづくりのルーツではないかと思います。
4、「美意識こそ日本のモノづくりに必要なものである」
近年、中国をはじめとするアジアの国々の安価で大量の労働力に日本のモノづくりは押されている現状ですが、私たちはこのすばらしい風土の中で育ってきた美意識を誇りに思い、またその美意識や豊かな感受性をモノづくりの現場で生かすことにより技術力を高め、高品質、高付加価値、日本でしかできないものを作る、それが日本のモノづくりの原点であり、独自性であると思います。
5、まとめ
時代は日々刻々と変化し現場はそれに対応していかなければなりません。しかしどれだけ時代が変化しようとも忘れてはいけない事があると思います。それが日本の美しい国土や祖先の作り上げた素晴らしい文化遺産です。それらを守りその美意識を受け継いで行くことが日本のモノづくりにとって決して忘れてはならないことだと思います。

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