仕事における機械と人間の将来
第18回産業論文コンクール 努力賞
ニッタ株式会社奈良工場 村井朝登 氏
『 仕事における機械と人間の将来 』
ある時「製造業についての将来性についてどう考えている?」という問いに対し、私は上手く答えられなかった。というのも現代における電子化、機械化は目覚ましい進歩を遂げており、私たちの生活などにおいてもボタン1つで1から10までを人間の手を介さずに行ってくれる。生きていく上で全ての物事に密接に関わってきており、人の手によって行われている多くの仕事が機械化されていくと言われている。今まで人間の「道具」に過ぎなかったモノが大きく変化していき、人間に取って代わる新たな労働力となってきている。これは大変喜ばしいことであり、それによって人の暮らしは今よりも一層豊かなものになるだろう。
しかし、それは今まで人間が使う一つの「道具」であったものの存在が大きくなり人同士の仕事に割って入る存在になっている。実際に人間に「しか」できない仕事が、機械「にも」出来るようになり、それが今後より鮮明に浮き彫りになると考えている。実際、メディアなどでは、近い将来、機械に仕事を奪われるのではないか?という話題がある。これからは、自分が従事している製造業でも、人間と人間が切磋琢磨していくという構図から機械との戦いをしていかなければいけないということだ。またそれに勝つためには機械には出来ない、即ち人間にしかできないことを見つけなければいけないということである。
では、どのような点で差異を明らかにしないといけないかを考えた。私が勤める会社や多くの製造に携わる職種では、4Mという言葉を使う。4Mとは、物事をMan(人), Machine(機械),Material(材料),Method(方法)の4つの要素で考える手法で、機械以外の3つの要素で人間にしかできない部分を見つけていかなければならない。
まず「人」の部分だが現場の作業員のスキルである。機械が全自動で完結するものもあれば、人の手で加工を加えるものもある。人による作業には、触覚や聴覚などの感覚を必要とされるものがあり、長年の培ってきたものが試され難しい工程を行うことができる。また、トラブルなどの有事の際、機械では定められた範囲でしか原因を究明できないのに対し人間ならば1から10ならず思いつく限りのことを対処できるのが強みであるといえるだろう。
第二に「材料」では物を製造するにあたり原料や資材などを調達するのは必須であり、それらの物を仕入れる手段や仕入れ先の選定、調達量の調整。そして、それらの検査は人間の細やかな確認があるために安定した製造を行えるといえるであろう。
第三の「方法」が最も機械との差別化を図れるものと思っている。そもそも機械は、指示された業務や作業を人間と同等に行うことができる。また、現在与えられている作業から無駄なものや効率等を数値で表し、無駄と思うものを簡略して表すことは出来るだろうが、現在の作業に新しくアイデアを加えたりすることは人間にしかできないことである。既存の物から何か不要を無くすことは出来ても、新しい革新や変化をもたらすことできるのが人間の大きな強みといえるであろう。
ではこの3つの点を踏まえて私たちがどのように戦っていくかということだが、一つ目の「人」だがどのような職種でも絶対的必要性があり、良い人材を育てるには自分自身が良い人材、手本となるために日々努力し円滑なコミュニケーションや自己研鑽を行い、常に仕事について考えを巡らせ、向上心を持つことが大事であり、何の疑問も持たずに指示されたことだけの作業を行うだけではいずれは淘汰せれ、今後の人材も育たなくなり、これからの会社を動かすための全てが上手くいかなくなる。機械と戦うどころか、その土俵にすら立てなくなる。そのために全ての物事に関心をもつことが大事である。それが二つ目の「材料」にも繋がると考えており、製品にもそれを構成する一つ一つの部品にも理解を深めることが重要だ。理解をすることによって部品の在庫数や品質の劣化、部品の間違いを把握できるようになり、機械では判断できないところまで目を届かせ、より良いものを生産することができるであろう。ただ問題が起きてからではなく、未然に防ぐことや作業中にトラブルがあった際により正しい判断をするためだ。複合的な問題から異常が起きても正しい判断が出来るのが人としての強みになる。
そして、3つ目の「方法」だが弊社でも積極的に職場改善案の提出を行っており、毎月一つ以上の改善案の提出が目標になっている。そのおかげで、常に新しい視点を持つことができ、作業者ならではの考えや新しい工程を生み出す事ができる、無論いつも素晴らしいアイデアが、出てくる訳ではないが、それを考えるということが人間の最も大切なものだろう。
これから数年、数十年後に起こる機械化社会は私たちにとってより良いものを与えてくれるであろう。しかしそれは時に敵や、ライバルになるということでもある。機械には機械の強み。人間には人間にしかない強みを常に考え、日々邁進し続けることで我々の将来の展望も明るいものになるだろう。