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会社に貢献するということ

第18回産業論文コンクール     努力賞
     住江織物株式会社奈良事業所  古田みいこ 氏
    
           『 会社に貢献するということ 』

 

 「一日も早く住江織物社員として貢献できるよう精進してまいります。」

  令和4年4月1日、私は入社式で意気揚々と宣言した。しかしこの言葉は社会人になる前の、一大学生としての漠然とした目標であり、いざ配属されると、新入社員の私は目先の仕事に追われて働くだけで精一杯で、この宣言は意識の底に沈んでしまっていた。配属から4か月あまりが経ち、徐々に経験を積んでいる今の私は、この宣言を実現するためにはどうすればよいのかを理解しつつある。そこで今回は、「会社に貢献する」ということについて現在の私なりにかみ砕いて解釈し、今後の私の目指すべきところについて述べる。
 「会社に貢献する」とは、すなわち「会社に有益な価値を提供する」ということだと私は考える。ここでいう、私が提供できうる価値には、

①   直接的に経済的な利益に結びつくもの

②   間接的に経済的な利益に影響するもの

の2つがある。

 ①の価値を提供するために最も重要なのは、効率よく仕事をこなすことである。正確な仕事を無駄なく迅速にこなすことが、利益の創出に直結する。では、現在の私はどうであろうか。開発する商品の加工条件を検討しての試作、試作品の物性評価、他社商品の分析、会議資料の作成、会議後の議事録の作成…と任される仕事が増えていくにつれ、手一杯になって優先順位を見失ったり、資料の作成が締め切り寸前になってしまったりしている。使用する材料の準備不足で、実験室と作業場をバタバタと行き来することも日常茶飯事である。
  このように現在の私の仕事ぶりは理想とは程遠いものであるが、効率を上げるために、上司がある時にくださった2つのアドバイスが有効だと考えた。

 1つ目は、「報連相を密にする」ということである。配属当初、資料作成を任された際に、私はわからないながらも黙々と業務を進めて、自分なりに完成させた資料を提出した。しかし、その内容は上司が意図していたものとはかなりのズレがあり、「完成前の50点の資料でも構わないから早めに共有してほしい」とフィードバックを受けた。その経験から、今の私の主観で満点を目指して資料を作成するのではなく、都度作成状況を報告することで、改善点の早期発見につながるのだということを実感した。また、抱えている仕事の緊急度と重要度を加味して優先順位を決定する際には、自分の認識が間違っていないかを相談することも必要だ。求められる結果だけではなく、自分がどう考えているかを過程から共有することが、本当の意味での作業の効率化につながるのだと理解に至った。

 2つ目は、「段取り8分、仕事2分」である。配属後3週間でその言葉を言われたとき、私はその言葉の重みがわからなかった。しかし、経験を重ねるにつれて、業務を過不足なく達成するには、先を見据えた想定をして前もって準備をする力、つまり「段取り力」が重要であると気づき始めた。新たな設備導入を検討する際には、いきなり設備を取り扱っている企業と打ち合わせをするのではなく、その設備導入の目的、期待される効果、運用イメージなどの構想を明確にもったうえで次のステップに移る。そうすることで、起こりうるトラブルなどの想定もできているため、予期せぬ事態にも柔軟な対応が可能である。物性評価のためのサンプル作成でも、先にしっかりと目的を踏まえてこそ、必要な量や時間配分を冷静に組み立てることが可能となり、無駄なくスムーズに業務にあたることができる。

 次に、②について私が提供できうる価値として、職場環境の雰囲気づくりを挙げる。仕事は周囲の協力や関わり無しには進められないものであり、コミュニケーションをとったり気配りをして周りを見ながら仕事をしたりすることは、円滑な業務の進行に欠かせないことである。配属されて間もない頃、上司に連れられて製品の製造工程を勉強していた際に、私は現場の作業員の方々の名前をすぐには覚えることができなかったが、それでも挨拶だけは欠かさないようにしようと心掛けていた。その数日後のことである。作業員の方が「いつも笑顔でいいね、明るい気持ちになるよ」と声をかけてくださった。その時私はまだ新入社員の私にも誰かに提供できる価値があり、さらにそれを認めて伝えてくれる人がいるこの環境は、とても働きやすいと感じた。今思えば、この時に「職場環境の雰囲気づくり」という価値の提供について考え始めたのかもしれない。この人と一緒に働きたいと思われるような存在でいることや信頼関係を築くこと、さらにそれを業務の成果として形に見えるものにすることは簡単にはできないだろう。だが、日々の小さな積み重ねは確実につながっていて、プラスの影響を及ぼすことができるのだと感じている。

 ここまで、私が会社に提供できうる価値とそれに関する現在の私の立ち位置について述べたが、共通して今の私に圧倒的に足りないものがあることに気がついた。それは「知識」である。業務を効率化するための優先順位付けをしようとしても、その業務が必要とされるまでの背景や取引先との関係性を知らないために、的確な判断ができない。知識をもっていないことから自信や余裕がなく視野が狭くなってしまった結果、周りの環境や人のために行動を起こすことができない。知識不足は、私が会社に貢献するために必要なことを様々な面で阻んでいた。しかし裏を返せば、知識さえ身につけてしまえばより高い価値の提供ができるのではないのか。ここで、「貪欲な姿勢で知識を吸収し、それを反芻し、業務に反映する」という、会社に貢献するための第一歩となる私の目指すべきところを明確にすることができた。

 配属されてから今まで、入社式の宣言がいつの間にか置き去りになってしまっていた。今回初心に帰ったことで確立した、「私の目指すべきところ」に到達して宣言を実現するべく、一つ一つの仕事や人との関わりに真摯に向き合い、日々の業務にあたっていきたい。

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