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ここから奈良県へ~今の私にできる事~

第18回産業論文コンクール     努力賞
     佐藤薬品工業株式会社 邑瀬有希乃 氏
    
           『 ここから奈良県へ~今の私にできる事~ 』

 

、     はじめに

 私が勤務している佐藤薬品工業株式会社は奈良県在住の人材を多く採用しており、奈良県の人を、奈良県で就職させる事に力を入れている企業の一つである。自身が生まれ育った故郷で就職し、故郷の為に、故郷のこれからの為に、奈良県の産業を活性化させようとしている。私もその考えの一人である。しかし、大学卒業後、就職活動を行う際、周りの人たちは地元である奈良県を選択することはなく、県外へ就職活動を行っていた。自分が慣れ親しんだ故郷を離れ、また親元や友人から離れ、見知らぬ土地にも関わらず一人で働く。私にはそれが不思議で仕方がなかった。では、なぜこんなにも魅力が多い企業がある奈良県の産業が他府県から遅れをとっているのか。私なりに考えた問題点と、改善策をこれから述べていきたい。

2、     問題点

 私が思う最大の問題点は、奈良県の「県外就業率」にあると考える。奈良県の県外就業率は28.8%で、埼玉県に次いで全国二位であり、全国でもトップクラスだ。また、近畿地方の他府県と比べても、倍以上の差がある。奈良県は全国で見ても人口が少ない方ではない。暮らしやすい県であることは間違いないはずである。職場は暮らしている所に近い方がいいはずである。それにも関わらず、奈良県の北和地域の人は京都府へ、中和地域の人は大阪府へ、東和地域の人は三重県へ、南和地域の人は和歌山県へと働きに出てしまう。ではなぜ、奈良県は県外就業率が全国でトップクラスなのか。それは、「奈良県内の産業規模・経済規模が他地域よりも小さいこと」が原因であると考えられる。奈良県の産業規模・経済規模は人口に対して小さい傾向があり、工業生産額が周辺他地域と比較するとかなり少なく、観光業も京都のような大きな産業規模ではない。また、農業も各地で行われているが、耕地面積が広くないこともあり、農業県と言えるほどの規模もない。これといった突出した産業がなく、全体的に経済規模が大きくないのが奈良県の特徴となってしまっているのが現状だ。また、働きどころが偏っている点についても着目したい。奈良県民は、時として揶揄的に「奈良府民」と呼ばれることがある。これは、奈良に住んでいながら、隣の大阪府に通勤している為、奈良県は寝食を行う場所であるといった意味合いを指している。奈良県は、スーパーなどのお店(卸売業・小売業)、病院や福祉施設、塾などの教育関連など、住む人の生活を支える仕事や職場が他の職種に比べて多い。一方で県外からのお金の流入が見込める産業として「製造業」と「宿泊業・飲食サービス業」がある。しかし、奈良の産業と胸を張って言えるほど盛んではなく、まだまだ発展途上だと言える。このような状況では、若者が就職活動をする際に、古郷である奈良県を選ばず、周りの他府県へと流れてしまうのは、仕方がないことだと感じてしまう。

3、     改善策

 このままでは、私の故郷である奈良県は若者が働きに出て奈良県に帰ってくる事無く、若年層が減り、今よりもっと産業が衰退してしまう。そのような事態を防ぐ為に、私なりに改善策を考えた。それは、「奈良県の中小企業を盛り上げる」ことだ。私が勤務している会社もそうであるが、奈良県には優良な中小企業が多数存在する。全国に出回っていたり、日本中の人が知らずのうちに使用していたりと、実は奈良県の中小企業が関わっていることがある。しかし、全国の人たちはもちろん、奈良県民でさえ知らないことが多い。それは、県民性なのか、前に出て目立つ事を嫌うからなのかは分からないが、PRが上手くいかず、外に発信できていないように感じる。これだけ優良な中小企業が多く存在しているのにも関わらず、知られていないことは奈良県にとって、とても惜しいことであると思う。そこで私は、奈良県の中小企業を盛り上げるには、SNSの活用が必須であると考える。今では、就職活動などもSNSを利用する時代になった。企業の内容や詳細は、調べればいくらでも出てくる。誰でもいつでも気軽に見れるのがSNSの強みだと感じる。それならばSNSを活用し、若い世代に向けて発信していくのは、効果があると私は考える。多種多様なSNSを活用し、たくさんの人たちに会社のことを知ってもらうことによって、働きたいと思ってもらえるのではないかと思う。

4、  まとめ

 奈良県の県外就業率が全国でトップクラスなのは改善すべき点ではあるが、一方で良い点もある。周りの地域に移動しやすい公共交通機関の整備が行われている点や、教育熱心で優秀な人材が多く、様々な地域で活躍している点など短所の裏側には長所も隠れていることが分かる。それでも私は、奈良県の人が奈良県で働く世の中をつくっていきたいと思う。まずは私が、たくさんの人に我が社の名前を知っていただけるように日々精進し、そして今度は我が社が、奈良県の為に力になれるよう努力したいと思う。

 

 参考文献

https://www.pref.nara.jp/secure/239357/part_04_07.pdf(県外就労率-奈良県)

http://www.chuokai-nara.or.jp/nara-job/www/(奈良県中小企業団体中央会)

https://www.pref.nara.jp/koho/kenmindayori/tayori/t2013/tayori2501/nara_toukei2501.htm(県民だより-統計から知る奈良 県外就業率から見た奈良県)

 

 

 

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