成長するために
第17回産業論文コンクール 努力賞
三笠産業株式会社 有村柾哉 氏
『成長するために』
私が昨年の4月に三笠産業株式会社に入社し、現在の部署に配属されておよそ1年が経過した。私が配属された部署は、主に射出成形で使用される金型の設計・製作に携わっている部署である。金型とは、金属で製作した型枠の総称である。自社では、主に食品調味料の容器などで使用されているプラスチックのキャップやボトルの生産に金型が活用されている。配属直後からは、自社の金型について勉強するために先輩社員とともに金型のメンテナンスを行っている。最初の頃は先輩社員に教えてもらうことばかりだったが、今ではメンテナンスの仕事を任されることが増えてきた。その仕事を通じて、自分が社会人として成長出来ているのか考えるようになった。まず、成長とはどういったものか調べてみた。
成長とは、漠然としていて具体性が無い。人それぞれの考え方・価値観に依存しているとある。成長の具体例として「自信を持つこと」、「毎日の積み重ね」など様々なものがある。それらが他者に認められたとき、成長したと強く実感することが出来るとある。成長について調べていく中で「技術的な成長」と「精神的な成長」の2種類があることを知った。技術的な成長とは「出来ないことが出来るようになること」や「もっと上手く出来るようになる」などの技術の習得である。それに対して、精神的な成長とは忍耐力や持続力などの内面的な成長である。一般的に、成長と聞くと技術的な成長を思い浮かべる事が多い。しかし、技術的な成長だけでは本当の意味での良い仕事は出来ない。そのため、もう一方の精神的な成長が必要不可欠である。この点について経営学者だったピーター・ドラッカーの名言集の中に以下のような発言がある。
「指揮者に勧められて、客席から演奏を聴いたクラリネット奏者がいる。そのとき彼は、初めて音楽を聴いた。その後は上手に吹くことを超えて、音楽を創造するようになった。これが成長である。仕事のやり方を変えたのではない。意味を加えたのだった。」
これは、とある指揮者とクラリネット奏者のエピソードである。楽器を上手に演奏が出来る人であったが、他の観点から観ることによってその人が全人的に没頭できる仕事になった。意味を見出したときに、人は「技術的に長けた仕事」を超え、その人でなければ創造できない「豊かな仕事」を生み出すことが出来るのである。
経験の浅い私には「技術的な成長」が今は重要である。技術が成長することによって仕事を上手に出来るようになり、少しでも仕事や社会に貢献出来る。しかし、自分が本当に成長する上で大事なのは「精神的な成長」である。ここで、自分の成長について考えてみた。技術的な成長では、メンテナンス作業の作業速度や効率性が成長した。精神的な成長では、メンテナンスや金型の勉強に粘り強く取り組むことで持続力が向上した。これから仕事をしていく上で、様々な問題が起こると考えられる。そういった問題に直面したとき、クラリネット奏者のように別の視点から見ることによって直面した問題を打開し、意味のある豊かな仕事を行っていきたい。
また、入社して間もない頃や新しい仕事を任された当初は、技術力が伸びる「喜び」がある。しかし、仕事に慣れてくるにしたがって惰性や仕事に対するモチベーションの低下が生じてくる。そのため、より成長するには自分の仕事に対して、意味を満たす「喜び」を見出せるかどうかである。内的変革によって、技術的な成長も精神的な成長も出来る。
技術的な成長も精神的な成長もするには、何事にも挑戦することが重要であると思う。多くの人は失敗を恐れ、挑戦することを避けたいと思うだろう。私自身も今までずっと失敗を恐れ、周りの目を気にしながら失敗しないように心がけて生活をしていた。失敗しないことが成長に繋がると思っていたが、成長について深く考えることで、失敗を恐れず挑戦していくべきだという考えになった。失敗したとしても、そこから学び、次へと繋げていくことが出来る。この繰り返しが成長に繋がり、また、自分が学んだことなどを後輩社員に教えることでそれに対して理解を深め、更に成長できるのではないかと考える。
これまで書いたことは、成長について、成長するために重要なことである。この論文の執筆を通して、改めて自分の課題点、目標が定まったと思う。今の私にとっては、難しいことが沢山あるが失敗を恐れず、日々挑戦していき、少しでも社会に貢献できる人材になりたいと思う。
(参考文献)
・仕事術 「成長とは何か」を自分の言葉で定義せよ 村山 昇
https://www.insightnow.jp/article/7893
・ドラッカー名言集 仕事の哲学 最高の成果をあげる ダイヤモンド社 P.F.ドラッカー:著