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役割を果たすことの重要性と難しさ

第15回産業論文コンクール 努力賞
大和信用金庫  横山真意子 氏

 

 『 役割を果たすことの重要性と難しさ 』

 

 一年半前、入庫し私が配属されたのは当金庫の中でも規模の小さな「小店」と呼ばれることの多い支店であった。「大店」と呼ばれる規模の大きな支店と比べれば、一日の来店客数も仕事量も遥かに少ないことは周知の事実である。実際、「楽な支店に配属されて良かったね」と何度か言われたことがあるほどだ。
 しかしながら、小店には小店の大変さがあるのである。それは、分担を決めて専門的に業務を行っていくことができる訳ではなく、全員が全般的にどんな事務内容でも行っていかなければならないということである。そして入庫一年目当時の私にとって最も大変であったことは、事務量の少ない支店であるため数少ないチャンスの中で確実に業務内容を身に付けていく必要があったことだ。つまり、それが新入職員という立場の私に与えられた果たすべき役割の一つであったのだ。その他の役割としては金融機関職員として身に付けていかなければならない知識に関する資格試験に確実に合格することなどが挙げられた。
 資格試験の合格は別として、私は、仕事というものは一人で完成させられるものは何一つなく、何人もの人の手や知識、経験が加わり全てが繋がっているからこそ初めて完成できるものであると考えている。そして仕事を完結させるためには、その業務に携わる各々が役割を果たす必要が出てくる。人は社会生活を営む中で家庭や会社など何かしらの団体に属している。そうすることによってその人の立場が位置付けられ、その立場に相応しい役割が与えられる。役割とは立場を踏まえて割り当てられた任務であり、役割を果たしてこそ初めて他者から評価されるのだ。この他者からの評価というのは狭義からいえば社内での自身の評価になるが、広義からいえば会社として顧客から信頼を得られるかどうかになるのである。だからこそ私は役割を果たすことが重要だと感じるのだ。 
 役割を果たしていくには自身の仕事に対する積極性、周囲の環境、コミュニケーションが大きく影響している。私はもともと新たなことにチャレンジしていくことが好きな性格であるため、幅広い業務内容を覚えていかなければならないことに対する抵抗は全くなかった。むしろ、支店の一員として様々な業務に携わることができる喜びの方が大きかった。しかしながら、私の意欲だけでは私の新入職員としての役割は果たせないのだ。前述したように周囲の環境とコミュニケーションも重要なのである。大変ありがたいことに私の上司や先輩方は、新入職員には難しそうな内容であったとしても経験を積むことを優先し、指導してくれた。私がミスをして、再びミスを犯してしまうのではないかという恐怖を心の中で抱いている時も「失敗をしてみないとわからないことや失敗から学べることもある」と温かい言葉をかけてくれた。そして上司や先輩方は自分が忙しくても、私に声をかけ進捗状況を気にかけてくれた。そのような恵まれた環境があったからこそ日々新しいことを学び、役割を果たしたいという気持ちになることができたのだ。
 しかし、私が入庫二年目に突入すると同時に指導員をしてくれた中堅の先輩職員が異動することになり、今度は私が指導員という立場になった。立場が変わるということは、必然的に役割も変わってくる。その事実が見えてきたときに、経験も浅く知識量も少ない私に先輩の後が務まるのかどうか、指導員として後輩に最適な指導ができるのかどうか、とても不安になったことを今でも覚えている。  指導員になってから後輩にどのように説明すれば業務内容を理解してもらえるのかを考え、後輩に役割を果たしてもらうための環境づくりもまた指導員の役割なのだと痛感した。新入職員の一年間は、その時点では精一杯やっていたつもりであったが受動態であったことが多く、視野が狭かったと感じることがある。それは少ないながらも一年で経験を積み、立場が変わった今だからこそわかることなのだ。新入職員の頃より業務の幅がさらに広くなり、日々の業務に追われるだけになっていて、私に与えられた役割を果たせているのかどうかと自問自答する日々が続いている。おそらくこの明確な答えはまたさらに立場が変わらなければ見えてこないのだろう。
 役割を果たすことの難しさを常々感じながらも、仕事に対する積極性やより良い環境づくり、周囲とのコミュニケーションを大切にして、役割を果たすことの重要性を決して忘れることなく業務に取り組んでいきたいと思う。そして広義での他者からの評価である、会社としての顧客からの信頼を得られるよう努めていこうと強く考える。

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