「ギブ&テイク」の精神
第15回産業論文コンクール 努力賞
株式会社ヒラノテクシード 石橋光史 氏
『 「ギブ&テイク」の精神 』
今年で入社3年目を迎えた。まだ若手に分類されるとは思うが、未熟な部分もありつつも、自ら主体的に仕事をしていかなければならない機会も多くなった。そんな中、後輩社員も増え、誰かに「教える」という行為が増えた。そして、いざ「教える」となると、相手に上手く伝えられない場面に多々直面する。自分がぼんやりと理解している・無意識で進めている作業は、言葉にして、相手に伝えようとすると、その作業の根拠・理由を正確に認識できていないことにハタと気づかされる。多くの人が学生の頃に先生からよく言われたことがあると思うが、『誰かに説明することができて、初めて自分が理解したと言える。』という言葉を、今は身をもって体感している。誰かに「教える」という行為を通して、自分の理解度を再確認している。また、誰かに伝えようとすることで、要点のみを掻い摘んで伝えようと努めるため、改めて自分の頭の中を整理しなおすことができ、自身の理解を深められていることにも気づく。誰かに伝えるため、自分の考えをアウトプットしようとすることで、相手のためだけでなく、自分の成長にも繋がっているのである。
また、最近では、「教える」だけでなく、「共に考える」という機会も増えた。若干のキャリアを積み、今までは自分の仕事ばかりに目を向けていたが、周りの人の仕事にも気を掛けるようになった。相手からは疎まれていることもあるかもしれないが、後輩や同世代の人たちに、積極的におせっかいを焼くよう心掛けている。相手の仕事の様子を伺い、躓いている・悩んでいる問題があれば、一緒に考える。そうすることで、いくつかの利点があると思う。一つ目は、自身の成長の糧となる。経験のある問題であれば、相手に教えようとすることで、自身の認識の整理になる。反対に、経験のないものであれば、新たなことを学べるチャンスとなる。いずれにせよ、他の人の抱えている問題を、自身の問題と捉えることで、自分の成長にも繋がると思う。二つ目は、問題の状況を説明してもらうことで、相手の頭の整理になる。やはり、一人で考えていると、どうしても思考が固まってしまうことがある。状況を整理して伝えようと、一度言語化することで、改めて広い視野を持って問題に立ち向かえるようになると思う。三つ目は、情報共有しやすい雰囲気作りになる。ちょっとした疑問でも質問しやすい職場環境を作っておくことで、一人で抱え込む時間を減らすことできる。かつ、問題がどういったところに潜んでいるか把握しやすくなる。さらに、誰かに気を掛けてもらうことは、悪い気はしないと思う。問題そのものがすぐに解決しなくとも、それだけで単純に安心感が増し、仕事のストレス軽減になる。少なからず、私自身は悩んでいるときに、周囲の人に声を掛けてもらえることが励みになっている。仕事は独力で進めるよりも、誰かと共に悩み、協力し合って進めた方がずっといいのである。
「教える」、「共に考える」という機会が増えたこともあり、自分にはまだまだ周りと関わり合って仕事を進めていく力が足りていないと感じるようになった。今までは、「与えてもらう」ばかりの立場であったが、これからは、「与える」立場にもなっていかなければならないと思う。そのためには、僅かではあるが、自分の経験や知識を自分だけのものに留めず、言語化してアウトプットしてみる。そして、ひとまず周りの人に知ってもらえる情報にすることが重要だと思う。どんな些細なこと・稚拙なことでも、とにかく自分の経験・知識等を言葉にして、周りと共有できるものにする。それが必要なものか否かは、後から判断すればいい。共有できるものになれば、周囲からフィードバックをもらえるようになる。自分の思考に対して、アドバイスをもらう可能性が増えるのである。発信された情報は、フィードバックにより改善され、全体の共有財産として蓄積されていくことになる。アウトプットしなければ、ずっと何も残らないままである。しかし、何らかのアウトプットをすれば、それが無駄になることはない。塵も積もれば山となるのである。全体で積極的に情報発信し合って、互いにフィードバックを掛け合うというサイクルを繰り返すことができれば、共有財産を徐々に大きくしていけるようになる。個々が蓄えたせっかくの経験や知識を、独り占めしておくのはもったいない。少し手間は掛かるかもしれないが、個々の財産を周りの人も活用できる形に変えていくことで、全体の仕事の質を向上させられるようになる。そのためには、情報共有をより効率的に行えるような仕組み作りも必要になってくると思う。
結局のところ、綺麗ごとかもしれないが、周りの人を幸せにするために、周りに向かって、何かを与えようと心掛けて行動することが大切であると思う。そうすれば、おのずと自身の成長にも繋がり、自身も幸せにしていくことができるのである。そうした考え方を皆で共有し、行動に移していければ、より企業が発展していけるのではないかと思う。
―以上―