ホーム > 産業論文コンクール > 過去の入賞論文 > 第14回産業論文コンクール(平成30年度) > 「ものづくり」を通じて私が感じたこと

「ものづくり」を通じて私が感じたこと

14回産業論文コンクール 努力賞
株式会社M.T.C  中川龍之介 氏

 

「ものづくり」を通じて感じたこと

 

 私は、今の仕事が大好きです。
 高等学校を卒業し、『株式会社M.T.C』に入社して、早いもので2年半が経とうとしています。
 弊社は、金属加工プレスを主とした、いわゆる「ものづくり」の会社です。私は、そんな会社の「製造部」に所属しており、毎日毎日、朝から夕刻迄、金属製品の加工に携わっています。加工している製品は主に住設部品やオフィス部品、自動車部品などです。
 私は、幼い時からものをつくることに興味があり、工作や技術の授業は積極的に受けてきました。特に何か賞を取ったなどの実績は無く、何か特化したものも無いのですが、ものをつくるということが、私にとって夢中になれるものの1つです。 先輩や上司より、日々色々な事を教わりながら、職務を全うしています。
 それから自適の生活を送っていた私は、つい最近、同郷の友人と偶然再会し、話をする機会がありました。久しぶりに再会したということもあり、昔話に花が咲き、懐かしみながら会話をしました。ある程度の時間が過ぎ、思い出話が落ち着いてきたところで、現在のお互いの近況の話になりました。友人も現在は別の会社で高等学校卒業後から就職しています。今行なっている仕事についてまず私から話をしました。冒頭で言った通り、現在の仕事を楽しく行っている私は彼に対して、自分の会社について、業務内容・会社の設備の事、または同僚の話などを面白可笑しく伝えました。しかし、そんな話を聞いている彼はそういった楽しいといった感じではなく、それとは逆の表情で、私に今の仕事に関しての不満を語り始めたのです。彼は現在「品質管理課」に所属しており、私とは全く違う、作り手側の勤務ではなく、管理業務に携わっているそうです。
 日常業務は主に、品質に対しての取引先とのやり取りや、社内への不具合報告を、製造部や部署に報告する事を行なっているそうです。その仕事内容に息が詰まるようになることがあるそうで、製造部に見回りに行っただけで製造部のメンバーは、露骨に嫌な顔になる事があるそうです。それは、彼自身が何か嫌がられる事をしている訳ではなく、業務の一環として取り組んでいること、つまり通常業務を行なっているだけなのですが、彼が近づいただけで、現場の雰囲気が重苦しく変化することを感じる事があるのだそうです。その事について悩んでいる彼を見た時、私の周りで取り巻いている環境について、考えるようになりました。
 弊社にも友人が所属する「品質管理部」はありますし、他にも「営業部」「管理部」そして、私の所属する「製造部」があります。弊社の中で、私の周りを取り巻く様々な部署が存在し、各々が業務をこなしています。今まで考えそうで考えなかったことですが、友人の一言で、その部署は何をしているか詳しく考えることにしました。
 私は今迄、部署朝礼の時に、現場リーダーからその日1日の予定を指示してもらい、それに基づいた段取りや、製造を行なっています。製造内容などでわからない場合などは、誰かに聞いて解決し、次の行動を取っています。毎日がそれの繰り返しで、私の今までの視界ではそこまでしか見えていませんでした。
 しかしその先には、各取引先から回ってきた注文書を確認する担当、それらを製造部に報告する担当、時には、品質異常があった場合や、機械トラブルになった場合も、それらに対応する担当もいます。製造部が加工した後にも、完成品を出荷チェックする担当、取引先に配送する担当など、様々な役割を持った担当者がいて、その中の一つでも欠落すれば、社内のバランスが一気に崩落してしまう「組織」というものがそこにはありました。そのサイクルの中に私も入っていることに改めて気付きました。
 何を今更と思う方もいるかもしれません。私の場合は、あまり判っていなかった事を、友人との話をきっかけに考えてみたことですが、中には、そういった「組織」の事を判っている事が当たり前になってしまい、風化し、各担当者同士が、特に関心を抱かせないまま、自分の部署の事しか考えないでいる人の方が多いのではないでしょうか?そうなれば、先程の友人がいう「重苦しい作業場」の雰囲気を感じてしまっている人は他にもたくさんいるのではないかと私は考えます。そこから考えると社内で、部署同士で確執を持っている会社は沢山あると思います。そういった確執を払拭し、部署間の連携が取れていて、コミュニケーション力が高い会社こそ、本当のモノづくりに適している良い会社だと私は思います。
 近年「働き方改革」ということをよく耳にします。「長時間労働の解消」や「非正規と正社員の格差是正」や「高齢者の就労促進」などがあり、その背景には「労働力不足の解消」があります。しかし、本当に働きやすい環境下で、会社全体が手を取り合い協力し、課題や問題点に取り組んでいくことがまず先にしなければいけないのではないかと私は思います。そうでなければ、いくら新しい有能な人材が入社してくれたところで、私の友人の様な気持ちになれば、その会社からすぐに離れて行ってしまう、そんな気がするのです。だからこそ、部署間の壁を壊した、連携の取れた職場づくりが「働き方改革」を実行していくにあたり一番重要な事ではないかと私は思います。
 私は、今回の事を通じて感じたことは、私の会社にいる先輩は、素晴らしい横の繋がりが出来ていて、コミュニケーションが取れている素晴らしい会社であるということ。これからも「M.T.C」で働いていきたいと改めて再認識しました。まだまだ製造部の中では、未熟な私ではありますが、先輩達に負けない様に1日でも早く「製造部」で活躍し、先輩たちに負けない様な、みんなが働きやすい職場づくりの一員になれるように努力しようと思います。

 

このページの先頭へ