ホーム > 産業論文コンクール > 過去の入賞論文 > 第12回産業論文コンクール(平成28年度) > 2年目の気付き

2年目の気付き

第12回産業論文コンクール 優良賞
株式会社 ヒラノテクシード  奥野有輝 氏

 

 私が入社して社会人になってから、もう1年が過ぎた。新入社員も入社して私にも後輩が出来て、後輩に恰好悪い所は見せられないと、毎日の業務に頑張りとやる気が出るようになった。しかしそれと同時に私の心の奥深くに言い知れない不安が在る気がしていた。いったい何に不安を感じているのかを、じっくり考えてみると普段であれば気にしないような小さな悩みが積み重なって、不安を感じているのではないかと気が付いた。
 
例えば、①1年目とは業務内容がかなり異なる職場に移動になって1年目の経験が役に立たないのではないだろうか。②新しい職場で周囲の人達に馴染むことが出来るのどろうか。③「今」2年目の社会人である私は、「以前」2年目の社会人だった先輩達と同じように仕事で活躍出来ているのだろうか。④後輩に追い越されてしまったりしないだろうか。⑤頑張って話しかけても無愛想で、話す言葉に威圧感を感じる人とどのように上手く対話すればいいのだろうか。そういった小さな小さな、相談するような内容で無い悩みがいくつも合わさりゴチャゴチャになってしまって、自分でも良く分からない不安を知らない間に感じていた。
 その感覚がモヤモヤとして非常に気持ち悪く、何とか払拭しようと解決策を考えても、答えが出ず、こんなことも解決できない自分に嫌気とストレスを感じ、悩みが増えるという堂々巡りになっていた。そんな時、ふと1年目に言われたことを思い出した。以前、疑問だらけで質問をしても的を得ず、先輩から「君が何に疑問を持っているのかが分からない。紙に書き出してごらん。」と言われた時と、状況が似ていた為、とりあえずその言葉通りに今不安に感じている内容をすべて紙に書き出してみた。すると、不思議と頭がクリアになり、不安の種を1つ1つ落ち着いて考えることが出来るようになった。そうすると、次に1年目に言われた事や経験したことを色々と思い出し、また周りを見る余裕が出来るようになっていた。
 
1年目の時は、悩んで不安になって、あたふたするだけだった私が、あっさりと不安を1つ取り除くことが出来たのだ。仕事を通して学ぶのは業務の手順だけでは無い、その他の色々な事を先輩から学び、習得するのだという当たり前のことを思い出した。それならば、①の職場が変わることによる不安を感じる必要など無く、業務の手順はまた1から学べば良いし、②の周囲の人付き合いも1年目に比べれば見知った顔も増えているので、昨年のことを考えるとずっと簡単だと感じた。そうして1年目の事を思い出している内に③④に関しても、私は1年目に答えを頂いていた事を思い出した。1年目で何も出来ない私が先輩に追い着こうと我武者羅に作業をしていた時に、「人それぞれ成長する速さは違うから、さぼるのはダメだが焦る必要はない。」と言われた。焦っても仕方がない、一歩ずつ確実に差を縮めればよい。先輩や後輩を気にしすぎて、自分に意識を向けずに焦るばかりでは単純なミスをしでかす可能性が高くなる。考え方を変えるだけで、こんなにあっさりと解決してしまう事を悩んでいた自分が恥ずかしくなると同時に、1年目に比べて確実に成長しているという自信も持つことが出来た。しかし、⑤の話難い人との対話は解決策が見つからず、仕事だから我慢するしかないのかと憂鬱になっていた。だが、周囲を見る余裕が出来た私には先輩達の行動で気になるものを見つけた。それは、話す相手によって態度や言葉を変えるというものだった。あまりに当たり前の事だが、考えてみると私は誰と話す時も同じ様な話し方をしていた。そこで、先輩達の真似をして色々試した結果、言葉に威圧感があったのは私の話し方が回りくどくイライラした為だと分かった。その為話す時に結論を話して、詳細を尋ねられたらそれに対応するといった対話をすると、嘘のようにすんなりと話をすることが出来た。
 
これからも、もっと大きな悩み事を感じることが必ずあると思う。その時には、焦らず落ち着いて、1つ1つを解決する問題解決能力が必須となってくる。このことが、2年目にしてようやく実感することが出来た私の気付きである。

このページの先頭へ