私の仕事と環境問題との付き合い方
第1回産業論文コンクール 最優秀賞
三笠産業(株) 森島 香奈さん
奈良県北部の緑豊かな土地、平城山にある「三笠産業株式会社ならやま研究所」に勤務して1年と8ヶ月になります。
私は営業企画課に在籍し、営業活動のサポートをはじめ、情報提供のための調査業務や様々な取り組みに関する啓蒙活動等を行っています。業務を遂行する中で特に重要だと痛感する事は”製造業として企業が邁進していくには生産に力を入れるだけではなく、業界や社会の流れに着目し、常に先を見据えなければならない”ということです。事業を進めるにあたっても、様々な法規や規制が問題になってきますし、時代の流れに伴って新たに制定されるものもあります。知らなければ法規違反となり罰せられる事態も在り得ます。
そういった情報にアンテナを張り、必要なものを全社的に伝えていち早く対策をたてることはとても重要だと感じています。
私が業務の中で様々な情報を収集しながら、当社で取り組まなければならないと思う課題は大きく分けて3つあります。
まず1つ目は、「食品安全衛生」に関する問題です。食品に直接接する容器を製造する立場として、使用樹脂の規定や衛生管理(品質管理)は取引先ユーザーと一般消費者の信用にかかわる重要項目です。
2つ目は、「高齢社会化に対する取り組み」です。例えば、プロダクトデザインといった面からの取り組みとしては、高齢者や障害を持った方でも扱い易いデザインを行うこと、また開封のし易さに対する配慮を行った設計を行うことが上げられます。
そして3つめは、本論文の柱となる「環境経営」に関する問題です。何故この問題を柱にしようと思ったかといいますと、本年2月16日に温室効果ガス削減の国際条約「京都議定書」が発効された事を受け、内容物がなくなった後はごみとして廃棄される包装材を生産している企業として、どうあるべきか社員一人一人が真剣に考えなければ今後の企業存続にも繋がる問題ではないかと思ったからです。
そこまで言ってしまうと少し大げさにも聞こえますが、プラスチックの元となる石油資源の可採年数は41年後と計算されており※1、経済的な影響はもっと早い時期に表面化するだろうと言われています。化石燃料が有限のものであるならば、その資源を100%必要としている企業はどうなるのか…と考えると、とても深刻な問題だと思います。では具体的にどういったことに取り組めば、少しでも問題解決に近づいていけるのでしょうか。
1つ目の考えは、化石由来材料に頼るのではなくその代替材料を取り入れていくことです。現在では多くの会社が植物由来の生分解性プラスチックの開発に取り組んでおり、9月に閉幕された「愛・地球博」でも試験的に食品容器として検証されていました。まだ樹脂が高価格であることや食品接触容器全般に使用許可が出ていない等の問題がありますが、今後さらに多種の分解性機能を持ったプラスチック成型品を開発できるよう、当社でも研究を進めているところです。
2つ目は、3Rと言われるリユース(再利用)・リデュース(ごみの減量)・リサイクル(再資源化)の取り組みを行うことです。これは企業としてだけではなく、一個人としても力を入れたい活動です。企業として「環境経営」に取り組む姿勢は今や当たり前とも言える時代になっていますが、内部で働く個人における生活での取り組みや環境に対する意識は様々で、その部分の目覚しい環境改善が一番難しい問題なのではないかと思います。しかし、一人一人の意識改革が大勢のものとなれば、環境改善活動に対する最も大きな力になります。
なぜなら社会や企業を形成しているのは個人ですので、本来各個人の環境に対する意識が基となり、その意識が集まって、社会や企業の環境改善にも繋がるからです。
しかし、このように述べている私自身、入社前までは環境のことなど気にも留めない生活を送っていました。環境問題に対する内容を題材とするに至るまで意識が高まったのも、業務を通して実際に化石燃料の枯渇が迫っていることや、産業廃棄物処理場の不足状況など、具体的数値を知ることにより危機感が生まれてきたからです。
私は環境改善に関して重要なことは様々な団体において「環境教育」を行うことだと思います。私のように、知らないが故に危機感の薄い方は大勢いるからです。テレビでの呼びかけや自治体のごみの分別処理が進められていますが、深刻な環境問題の実態にまだ大きな関心が集まっていないように感じています。
その原因は、世間の目や社会的法令のために従っているだけで、分別処理などを始めとする活動を何故行わなければならないのかという、根本の危機的事実を曖昧にしか知らない人が多いからなのではないでしょうか。
まずは自分自身が現状を正しく認識し、少しでも環境に良い活動を生活に取り入れながら全社的に啓蒙できるようになりたいと思っています。そして、社員一人一人が「地球と人へのやさしさ」を考えたパッケージング企業として、美しい地球を大切にしていきたいと思います。
※1 「BP統計2004」参照