ホーム > 産業論文コンクール > 過去の入賞論文 > 第1回産業論文コンクール(平成17年度) > 製造業の将来のために

製造業の将来のために

第1回産業論文コンクール 努力賞
ニッタ(株) 坂東 敦さん

現在、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の経済発展は目覚しいものであり、現在のペースで経済が発展すれば、今後30年以内に経済規模で日本は中国、インドに抜かれると予測されている。BRICsの特徴としては広大な国土と多数の人口が挙げられ、そのバックボーンを基にした人件費を抑えた低コストでの大量生産が考えられる。 
一方、日本国内においては、少子高齢化の進行は今後も進むと考えられ、積極的な外国人労働者の受け入れ等の政策が取られていない以上、労働者人口は減少の一途を辿ると考えられる。
このように、製造業において日本企業が量の面で対抗するには不利である以上、質の面に特化する必要があるのではないだろうか。例えば、家電やIT分野等のように製品の移り変わりの早い分野においては、量産型でのシェアを減らしてでも高機能型に特化することが必要ではないだろうか。時間の経過に伴って、技術は進歩し続け、今の時代の高機能型は次の時代の量産型になり、量産型は旧型になり廃れる。資本主義経済が続き、人々が物質的な欲望を抱えている限り、このサイクルは常に続き、企業は常に技術開発により、新たな製品を作り出し続ける必要がある。いわば、マラソンのように、企業は常に前に進み続けなければならない。
そして、マラソンでの例えを用いると、後続集団から先頭集団に追いつくためには相応の努力を有することになるだろう。ならば、四半世紀後にBRICsや未だ現れぬ新たな成長国家に日本が対抗するためには、現段階から先端分野を突き進み、技術力の面で後続集団を突き放すことが求められる。
また、この一世紀の間において、日本の産業のトレンドは変化し続け、現在の地位に着いた。繊維等の軽工業の分野から鉄鋼・造船等の重工業の分野に進み、現在では情報関連等のハイテク分野等に産業のトレンドは変化を続けてきた。
このように、産業のトレンドは時代や技術の変化に伴って常に変化し続けてきたことは自明である。そして、昨今においては、製品性能の急速な高度化や、市場における製品寿命の短命化等についてもよく聞かれる。このことからも、新たな分野に向かうことを常に意識し続けるということが、企業の存続のための絶対条件であると言えるだろう。
では、これからの企業において何をする必要があるのか。先に示したように、製造業においては常に技術開発を進め続けることが求められるだろう。しかし、中堅・中小企業においては、収益に直結しない基礎研究などに注げる余力には限りがある。
一方、そのためにこれらの企業においては隠された能力が眠っているとも考えられる。そこで、今後これらの企業が行うべき手段としては、知識の集約化であろうと考える。各企業がバラバラに研究開発を行うのみでなく、企業内のプロジェクトチームのように、同業種・異業種と言った枠にとらわれずに技術・情報の交換が行えるようにするシステムの存在が必要であろう。
単独の企業において得られる情報量は限られた範囲のものであるが、複数の企業の情報が集積することにより、情報量が増加することは自明であり、また、他業種に及ぶことによって、情報の多層化を図ることができると考えられる。
次に、企業同士がそれぞれの得意分野を統合させることにより、単独の企業による研究開発では手に入れられない技術を入手することが可能になると考える。更に、各企業が有する情報を統合するということは、ある企業の情報がまったく別の方面に展開することになるので、想定外の発展につながることも考えられる。
また、企業単独での開発において、その方向性を誤って開発が失敗に陥った場合、その企業に与える損害が大きい。しかし、開発を他の企業と共同して行うということは、一社当たりの損害を分散させ、リスクを分散させることができるだろう。また、複数の企業が関わるということは、複数の視点から状況を把握することができ、ターゲットに対する方向性のずれを早めに修正することができると考える。
このように、企業間の技術・情報の集積化には、情報量の増加や多層化により研究開発の範囲を拡大できること、企業間の技術交流により多方面から技術開発に取り組めること、研究開発への投資の失敗の際のリスクを分散できることといった様々な効果があると考えられる。
次の次の時代のために次の時代の技術を手に入れる。製造業に携わる企業は常にこのことを意識し続けなければならない。そのために、企業という枠組みを乗り越えた存在に変化することが求められているのではないだろうか。

このページの先頭へ